この壺に描かれた豊富な絵柄の中で、どの模様が一番目を引きますか?
壺の口は帯状の模様で縁取られており、首元には連続する幾何学模様の「雷紋(らいもん)」、その下には鳥や太陽の形をした模様が見られ、肩部には羊の角をモチーフにしたような二つのカギ状の模様があります。この二つのカギ状の模様を特に注目し見てください。これは辛店文化特有の装飾で、研究によると、甲骨文(こうこつぶん)にある「中山羌(ちゅうざんきょう)」の「羌(きょう)」という文字に近いことが分かっています。辛店文化遺跡からは、羊の死骸も多数出土しており、羊が生活の中で重要な役割を果たしていたことが分かります。学者はこの模様が羊の角の形から進化したもので、古代チャン族(=羌族)のトーテムでもあったのではないかと推測しています。
太陽の模様もまた、辛店文化の彩陶器の非常に特徴的な模様です。これらの豊かな模様は、辛店文化時代の人々が持つ動物や自然への畏敬の念を反映しており、北西部草原地区の放牧風景を垣間見せてくれます。
辛店文化は約3000年前の中国北西部の新石器時代後期の文化遺産で、この大きな「双耳壺」は主に青海(せいかい)や甘粛省(かんしゅくしょう)等の洮河流域から出土しています。