この絵に描かれた雲海には明確な線や輪郭はなく、墨の境を濃淡でぼかして、重なる雲の層を描いています。一つ一つの雲の豊かさと厚みを表すと同時に、広々として果てしなく、幽玄茫漠とした情景が広がります。あなたは登山やハイキングをしている時、このような情景を目にしたことがありますか?あるいは玉山に登って実際にご自分の目で雲海を見たことがありますか?この絵の雲と似ているところや違うところはありますか?
もう一度、雲海に浮かぶ山や岩そして木々のたたずまいと、墨で輪郭を染めた雲を見比べてみてください。芸術家盛元芳が力強く洗練された画線でなぞった、凛として端正な山の風景が写し出されています。雲の動きと雲海の動きを呼応させた、鮮やかで美しい一幅の絵です。
作者は浙江省杭県出身で、幼い頃から風景画の基礎を杭州市西泠で先達に学び、台湾に来てからは水墨画の巨匠、黄君碧に師事しました。作者が師事した黄君璧は、画家の林玉山に「彼の作品は特に雲と水が絶妙です。幻想的で清らかで、すっきりとしており、俗気がなく、生き生きとしていて、一種独特な大胆さと気品を持っています。」と称賛された画家です。この黃君璧に師事した盛元芳は、彼女特有の女性らしさで、気品と気迫を兼ね備えた雲と霧を描きました。大自然の荘厳な美しさと優しさ、動きと静けさ、永遠たる雄大な美を具象化したのです。