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阿里山曉望 ありさんぎょうぼう
張大千(1899-1983)|紙本著色|1965
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阿里山の日の出をご覧になったことがありますか?

張大千は旅行好きで世界中を旅しており、その中にはもちろん宝島と呼ばれる台湾の美しい景色も含まれています。彼は、阿里山の日の出の風景は台湾一、さらには世界一の絶景であると考えていました。この作品は小さいながらも素晴らしい出来です。墨をしたたり落として飛び散らせ、大きな墨色の塊を作り、流動、沈殿、にじみという技法で抽象的な効果を与え、夜明けの山林が作り出す明暗のコントラストと、光と影の躍動感を表現しています。同時に、先に薄い墨で描いた後墨が乾かないうちに濃い墨で二回目の筆を入れる技法の「破墨」、大量の淡い墨色、濃い墨色を付けて、はね散らすように素早く描いて濃淡やにじみを付けて描く技法の「潑墨(はつぼく)」を使用して、乾いた墨と湿った墨の異なる色合いを相互に浸透させ、墨の色のにじみ、ぼかし、グランデーションの魅力を引き出しています。

絵の手前の景色では、彼は濃い墨色を使用して、静かで遠い山林と濃い朝霧を表現しています。視線を奥に移すと、中景には、家の屋根の輪郭が素朴なタッチで描かれています。淡い墨が夜明け前の白み始めた空の色に染まる木々の梢を浮かび上がらせ、画面全体に臨場感を与えています。

1956年、張大千は個展を開くためにパリに行き、ピカソと出会いました。その後、西洋近代美術からインスピレーションを受けた彼は抽象性と具体性、そしてモダンな雰囲気を組み合わせた潑墨(はつぼく)、潑彩(はっさい)をあみだしました。この作品は、「潑墨」技法で描いた山水です。中国現代画家の徐悲鴻は嘗て彼を「五百年に一人の逸材」と賞賛したとおり、彼は数百年に一度の、稀に見る巨匠なのです。

阿里山曉望 ありさんぎょうぼう .
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阿里山曉望 ありさんぎょうぼう
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